「淡々とトレードする」とは

前回は「メンタルを鍛える」というテーマで話をしました。トレードで勝つためには強いメンタルが必要でそのメンタルを鍛えるための方法を話しました。しかしトレードで勝つためにはメンタルを鍛えるだけではダメで「淡々とトレード」できなければならない、と最後に話をしました。自分もよく「今日も淡々とトレード頑張っていきましょう!」と日足予報の最後に締めくくっていますが、淡々とトレードすることは勝ちづづけるためには必須になります。今回は「淡々とトレードする」ことについて深堀していきたいと思います。

「淡々とトレードする」とは?

「淡々」とはどんな意味でしょうか。ググってみると、「態度・動作などがあっさりとしてこだわりのない様子」とあります。では「淡々とトレードする」とはどうゆう事でしょうか。自分は以下の様に解釈しています。

自分の感情・希望・要望・憶測に依らず、期待値の高いトレードを繰り返すこと

言葉を変えれば、「ルール通りトレードする」になります。「淡々とトレードする」と「ルール通りトレードする」は同じ意味です。ではこの「自分の感情・希望・要望・憶測に依らず、期待値の高いトレードを繰り返すこと」をするためにはどうしたらよいのか考えていきましょう。

「淡々とトレードする」ためには

淡々とトレードするためには、「自分の感情・希望・要望・憶測を排除する」必要があります。ルール通りトレードすることが重要で、自分の思い、希望、憶測は全く不要です。しかし人間は感情やいろんな自分に都合のよい思考が頭に浮かぶようにできているのでなかなか一筋縄でいきません。メンタルを鍛えたり、認知バイアス対策をするのは、そのためです。さらにトレード病とよく言われるものに下記があります。

ポジポジ病
タジタジ病
チキン利食い病
損切り出来ない病

人間の感情・思考に起因する病気はこの4つに集約されます。この4つの病気が発症しないようにすれば、淡々とトレードできる状態になります。それぞれ原因が異なりますので、1つずつ見ていきましょう

ポジポジ病

初心者トレーダに多いのがポジポジ病です。全ての値動きがチャンスに見えてエントリーしまくる病気です。環境認識が出来ておらず、短期足のチャートパターンや値動きにつられてエントリーしてしまう病気です。病気と言っていますが、これは認知バイアスによって引き起こされる、幻想・要望・思い込みによるもので、前々回の「トレードの大敵認知バイアス対策」をすることで直せる病気です。負けの9割がこのポジポジ病によるものなので、このポジポジ病を直すだけで負けにくい体質になることができます。またポジポジ病対策は簡単です。「エントリーしたいと思ったら、エントリーしない」とルールを決めてそれを実践するだけです。大体エントリーしたいと思っている瞬間は自分の思い込みによるところや、値動きが激しくなってきた時に乗り遅れるのが嫌でエントリーしたくなるのがほとんどです。まず「エントリーしたいと思ったらエントリーしない」を実践するだけでかなり無駄な負けがなくなります。あとはしっかりチャートになれて、相場感を付けたり環境認識できるようになることもポジポジ病対策になります。

チキン利食い病、損切り出来ない病

よくチキン利食いや損切り出来ないのは、プロスペクト理論で説明されます。プロスペクト理論は、不確実な事象を人間がどのように物事の意思決定をしているのかを体系化したものです。プロスペクト理論の結論は「人は、不確実性があるとき環境や条件によって、合理的な意思決定ができないことがある」としています。また有名なのが「利得より、同じ額の損失の方が2倍痛みを感じる」というものがあります。これが損切り出来ない病やチキン利食い病の原因とされています。だから人は損を確定できなかったり、利益を伸ばせる場面でもホールドできずチキン利食いしていまう、という理屈です。確かに含み損が100万円とかなったらなかなか損切りできなでしょうし、負け癖がついている人は、少し勝っているだけですぐ利食いしたくなるでしょう。

ここで疑問が湧いてきます。そもそも100万円の含み損で損切りできないのはプロスペクト理論で説明できるかもしれませんが、100万円の含み損にしてしまうまでの過程は、「合理的な判断ができない」という点のみ納得できますが、それだけでは全てを説明できているとは思えません。そもそも損切りのルールを守っていないか、ルールがないか曖昧にしている、どちらかのように思えます。ルールを守っていないとか、損切りのルールがない、ルールが曖昧だ、というのはプロスペクト理論以前の問題です。なぜルールが守れないのか、損切りルールが曖昧なのでしょうか。このルールが守れない、ルールが曖昧になってしまう原因は「不安と恐怖」です。また出ました。トレードの大敵、人間の感情「不安と恐怖」です。さて人はどんな時に「不安と恐怖」を感じるのでしょうか。それは次のような場合です。

生命・財産の危険があるとき
生命・財産の危機が予想されるとき
未知の事象に遭遇したとき
想定外の事象に遭遇したとき
次に起こることが予測できないとき

100万円の含み損がある状態は明らかに財産の危機がある状態です。100万円まで含み損を膨らます前に、損切りルールを守っていれば、最低限の金額で損切りできたはずです。つまりそもそも損切り出来ないのは、巡行シナリオばかりイメージしていて、損切りシナリオを想定していないから逆行した時に「想定外の事象」により不安や恐怖を感じて合理的な判断ができず損切りできない状態になっていると考えられます。だから「負けも想定内」で話をした通り、損切りシナリオを準備しておくことが大切なのです。予め損切りのシナリオ(逆行する値動き、又は巡行しない場合の値動き)を想定しておくことで、逆行した時点で負けが確定するので、損切りがしっかりできます。さらに思ったように巡行する値動きにならないときは、微益で逃げて目線を切り替えてトレードすることさえできます。

チキン利食いも不安と恐怖が原因です。どこまでレートが伸びるのか想定できないので、チキン利食いをしてしまうわけです。次に起こることが予想できない、この後の値動きが想定できないため、利益を減らすのがイヤだ、含み損になるのはもっとイヤだ、と不安と恐怖で微益で利食いしてしまうわけです。自分の場合、第一目標と第二目標を決めます。第一目標は、最初のレジサポラインです。第二目標はそのレジサポラインをブレークしたら次でレジサポされそうなラインです。だいたい50pips刻みのキリ番が自分の場合は多いです。この辺りの目標レートは経験によるところが大きいので、相場感を磨く必要があります。

タジタジ病

自分がなったトレード病の中で一番大変だったのがタジタジ病です。タジタジ病は自分のエントリータイミングで絶好のチャンスだと分かっていてもエントリーできない病気です。また仮にエントリーしたとしても巡行する前に逃げてしまいます。この病気はかなり深刻で原因は以下になります。

自己信頼の欠如
100%勝てる保障

自己信頼の欠如

負け続けると、どうしても自己否定を繰り返します。自分のエントリータイミングで見送ったりした後で思った通り巡行したりしても自己否定になります。ルール通りエントリーしたとしても、動き出すまで待てずにイグジットした直後に巡行したいりしても自己否定になります。また前回、エントリーしてイグジットした直後に巡行したから今日は頑張ってホールドしよう、と思ったときは大体バイアスにかかっていて逆行ポジションをホールドする羽目になります。このように勝てない負けの連鎖によって自己否定を繰り返し、自己信頼が崩壊します。勝ち筋が見えるのに勝てない自分がいて、これは一生勝てないかもしれないと思った瞬間でした。トレードが難しい所以がこれかと、ほんとに苦しんだころの心境です。

100%勝てる保障

そのような自己信頼が欠如した状態だと、負け癖がつきトレードにとって良くない思考に入っていきます。そして絶対勝てるところでだけエントリーしようと考えだします。ただトレードで100%なんてありません。トレードに100%の保障を求める時点で間違っていて、それは適切なリスクが取れない心理状態であることを意味します。そのような状態はバイアスに囚われやはり巡行シナリオしか見えない状態に陥ります。ここまで頑張ってきてもまた認知バイアスに囚われて負け続け、さらに負のスパイラルを加速させます。

タジタジ病の治療法

このようにタジタジ病はかなり厄介な病気です。自己信頼も欠如し、トレードに100%の保障を求めるが故に適切なリスクを取れず認知バイアスに囚われた状態です。トレードで勝てる要素は1つもありません。負け組一直線です。自分の場合このような状態になっていると気付くのに時間がかって大変でしたが、気づけただけまだましでした。自己信頼の部分ですが、勝てるあてもない中でもトレードの勉強を頑張って続けてきたこと。またそれによって、デイトレレベルでの値動きにはかなり習熟している点は自信をもっていいところだと改めて再認識することにしました。そして負け癖がついてリスクが取れない状態になっているので、とにかく自分のルール通りエントリーしてしっかりホールドしようと改めて心に誓いました。これまで何年も頑張ってきてここまで習熟しているのに、このトレードスキルを諦めるのがもったいないと思いました。明らかにこれはサンクコストバイアスだと思いながらも、後一歩のところまで来ていると自分に言い聞かせ、とにかく適切なリスクを取ることに集中しよう、とそう決めました。そうすることで、このタジタジ病を解消できました。タジタジ病に気づくまでが大変でしたが、それと気づいてからの対策をしっかり考えて実践することで、タジタジ病を直すことができ、ホントに負けなくなったのはここからです。

まとめ

  • 「淡々とトレードする」について考えてきました。
  • 「淡々とトレードする」とは、「自分の感情・希望・要望・憶測に依らず、期待値の高いトレードを繰り返すこと」
  • 「自分の感情・希望・要望・憶測を排除」するためには、トレード病を発症しないようにすること
  • トレード病には、ポジポジ病、タジタジ病、損切り出来ない病、チキン利食い病があり、その治療法を解説
  • 最も重症がタジタジ病で気づくのも治すのも大変

最後に

今回は「淡々とトレードする」について話をしました。「淡々とトレードする」とは、「自分の感情・希望・要望・憶測に依らず、期待値の高いトレードを繰り返すこと」ということと話をしましたが、このなかでまだ話をしていない部分があります。「期待値の高いトレード」です。次回は「期待値の高いトレード」について話をしたいと思います。