トレードが他の商売より超難しい理由

今回トレードの難しさについて話をします。前回のブログでは、「トレードは他の商売より簡単」という話をしたのですが、あくまで「トレードが簡単」というのは、他の商売より期待値や優位性がある点について述べただけで、実際にトレードスキルを身に着けてトータルプラスを出すまで行くのはかなり難しいです。自分も幾度どなく、あきらめかけ、これだけ頑張っても一生勝てないかもしれない、と不安が襲って辞めたいと思うことも多々あります。こんな自分でも勝てるようになってきて言える話なのですが、トレードで勝てるようになるまでにぶち当たった壁について話をしたいと思います。

すべては自己責任

このことは自分の取っては大きなメリットなのですが、多くの人はこのことを理解せずデメリット化していると思います。

まずはこれを理解せずしてトレードをしてはいけないと思います。トレードをするのもしないのも、その人の決断であり、その決定の責任は全て自分にあります。指標などでボラが大きくなりヒゲで狩られる、レンジブレイクしたと思って飛び乗って即逆行ということはよくあります。相場に当たり散らしたくなりますが、相場に当たることはできません。
衝動に駆られてトレードしても、間違いなくさらに特大のカウンターパンチを食らいます。これも全て自己責任、スキルがないことで負けたと自分自身で受け止めるしかないのです。全ての結果を自分自身で受け入れることが出来ない人は、人はトレードは向きません。

また自分で決められない人もトレードに向きません。進学先の学校や就職先、結婚相手、転職など、小さなことから大きなことまで人生で多くの選択をするわけですが、それも親任せや周りの意見に流されて、何となく決めているという人もトレードに向きません。「スキャル、デイトレ、スイングどれがいいですか?」と聞いてくる人は十中八九、自分で考えて決めることができない人です。仮にデイトレがいいですよと言われて、デイトレをやっても勝てないと、すぐ諦めて続かないでしょう。そうゆう質問してくる人にはFXに限らず投資全般はオススメできません。そのような人は絶対に勝てるようになれません。普通にサラリーマンをやっている方がその人にとっては不快でなく幸せだと思います。

やり直しがきかない、だれも助けてくれない。

普通の仕事は、失敗したとしても、お客さんや同僚に謝罪して、リカバーして取り返すことができます。その失敗を同僚や仲間が助けてくれるかもしれません。また少し時間をかければ解決できる問題も多々あります。一方トレードは、結果がすぐ出ます。またエントリーしたらやり直しはききません。エントリーやイグジットで失敗に後で気が付いてもリカバリーできません。1つ1つのトレード結果が確定していきます。また失敗しても誰も助けてくれません。結果が確定しているので、助けたくても助けられません。

もちろん次のトレードで同じ失敗をしないように、と思ってももう同じ相場は来ませんし、また同じような失敗をします。次のエントリーは、自分自身はやり直している気でいますが違います。全てのトレードが1つ1つ独立していて相互に作用しあってません。相互作用するのは自分のメンタルだけで、それはマイナス方向へしか作用しません。とても厄介です。

何が正しいか分からない。保障が全くない世界で、迷いが生じる。聖杯探しの泥沼の入り口がここ。

教科書や学校がない。トレードには決まった体系的な学習プログラムはありません。常勝トレーダーで先生になってくれる人もいません。トレードスタイルもいろいろ。スキャル、デイトレ、スイング、通貨ペア選びもそうです。何がいいのかも全く分からないなか、一人で進むしかありません。自分に何が出来るのか、どこから手を付けていいかも分かりません。トレードに避ける時間や資金も人により違います。

何から始めるのか、決めるのが難しいと思います。なぜ決めるのが難しいというと、人は失敗したくないからです。失敗したら、またやり直しになって時間もそうですがメンタルももつか心配になってきます。そうゆう先々の心配があると、人は行動できなくなります。そうゆう先々の心配事があってもそれはそれ、割り切ってとりあえずはじめないと前に進みません。この割り切りができるかが重要です。トレードの勝ちパターン探しの旅は、新規ビジネスを立ち上げるのと同じ感覚です。当たるかどうか分からないものに時間と労力、資金をかけて取り組むわけですかね。何がいいのか分からない段階で見切り発車で選んで進むしかありません。ここが難しい世界です。とりあえずやってみるしかないのです。

ただ全く何も分からない状態では進むのも難しいです。自分自身である何か納得して始める必要があります。自分の場合は、勝っていると思われるトレーダの言っていることを手引きとしました。なにか共通点がないかYouTubeを見まくったり本を読みました。それぞれ言っている事の共通点は以下のようなものでした。

  • 人によりトレードに避ける時間や環境は様々。自分の置かれている環境に合わせてトレードスタイルや手法を決めるしかない。
  • 人により性格も様々。トレード中の感情に向かい合ってトレードスタイルや手法は自分で決めるしかない。
  • 手法やトレードスタイルに正解はない。
  • ストレスなくトレードでき、トータル勝てるのあれば、それが正解。
  • 確率の世界で100%保証されているものは何もない。
  • 勝っているトレーダは既知の手法を使っている。何も特別なことをしていない

自分のなかで上記だけが、道しるべというか、あるかどうかも分からない隠された秘宝への地図のような存在です。トレードの勉強をし始めた当初はやはり勝てる手法は存在する、と思っていました。上記の勝ちトレーダの言うことは、頭では何となく理解できましたが、初心者当時は心底理解していたかというと疑問です。ただ「聖杯は無い、自分自身の中にしかない」という迷晴れさんの言葉を信じて進むしかない、それだけでした。

心底腹に落ちていないことを、とりあえず頭で信じて進むしかない。やったことがないことでも、出来る見込みがあれば人は始めることができるでしょう。全く出来る見込みがないのに、とりあえず「正解を自分で見つけるしかない」という言葉を信じて始める感覚。この感覚は普段の生活では味わったことない感覚です。とても不安になります。このどしようもない不安な感覚を受け入れて、チャートに真摯に向かい合えるかどうか、ここが最初の分岐点になります。この不安な感覚を受け入れないとどうなるかというと、手法探し、聖杯探しの泥沼にはまります。

認知バイアスによる非合理的トレード。負の9割はこの自滅トレード

ある程度、チャートに向かい合ってくると、パターンが見えてきます。自分なりに相場の規則性を見つけて、それをもとに手法を考えます。自分の場合は動画にもした5分足の移動平均を使った手法です。しかしこれも当初負けまくりました。環境認識が甘かったからです。レンジブレイクのダマシにあったり、値が走ったときに飛び乗って、即逆行して損切り。勝てると踏んでのエントリーもうまく行ったり、行かなかったり。みんな経験があると思います。自分の場合も例にもれずそうでした。

これは人間の脳に備わっている「認知バイアス」が引き起こしています。手法で決めているパターンに固執するあまり、他が見えなくなったり、勝てると決まった訳でないに、脳が利益がのる波形をイメージし勝ちを錯覚させます。大体負けの9割はこの認知バイアスが引き起こしている自滅トレードです。これは「認知バイアス」の存在を知って対策するしかないのですが、認知バイアスの存在を知っていても、認知バイアスの罠にかかって負けトレードを繰り返します。認知バイアスはいろんな種類があります。ポジポジ病もタジタジ病も認知バイアスが原因です。自分の場合はポジポジ病にもなりましが、タジタジ病にもなってかなり辛かったです。タジタジ病の方が重症なのでかなり苦労すると思います。このトレードの大敵である「認知バイアス」の対策はまた別の機会にしたいと思います。

自己否定の連続、メンタルの崩壊

聖杯探しもそうですが、「認知バイアス」による衝動トレードによって負け続けると、だんだんメンタルが病んできます。どちらもトレードに真剣に取り組めば取り組むほど、自己否定の連続になってきてホントにメンタルが病んできます。この自己否定はうつ病の原因にもなるそうです。この自己否定の連続をしないためには、初心者だから負けて当たりまえと負けを受け入れるか、勉強の段階なので負け額も授業料だと思えるかどうかです。ようは勝ち負けにこだわらないことです。勝ち負けにこだわると、どうしてもこの自己否定につながります。

また負けから同じ失敗をしないように学びを得る姿勢が大事なのですが、人は他人の失敗からは学びやすいのですが、自分の失敗からは学びずらい、という性質があります。どうしても同じ失敗をすると自己否定に向かいがちになるのです。分かっていてもやってしまう、ダメな自分がそこにいます。この辺りも人間の本来持っている性質なのでまずは頭で理解して対策を取るしかありません。

トレードの初期の勉強の段階では、勝ち負けにこだわらず、値動きの性質を理解するために、自分の場合はエントリーせずチャートをじっと眺める、というのを2~3か月やりました。これはかなり効果がありました。初心者の段階でもエントリーするとどうしても勝ち負けに目が行ってしまって、値動きに集中できなかったり、負けたあとの振り返りは出来ないものです。この「見るだけトレード」オススメなのでやってみてください。

トレーダーは、プレーヤーであり、監督であり、メンターである。

これもトレーダーの難しいところですね。トレーダーは、プレーヤーと監督とメンターを一人3役こなさなければなりません。監督として試合全体の見通して作戦を立てます。難しい場面では無理をせず、行けそうなところだけプレーをする指示を出します。そして自分でプレーをします。プレー中は自分の内側にメンターをもいて心の動き認知し、常にメンタルを正常に保つよう注意を払う必要があります。熱くなりすぎたら頭を冷やすように注意して、判断力が鈍っているところではプレーを休むよう促す。プロスポーツでトレードに一番感覚的に近いのはゴルフですね。

でもプロゴルフと比べ、トレードの方が遥に優しいところがあります。松山秀樹選手はマスターズで優勝しましたが、どれだけ優れた選手が多くいても優勝できる人はたった一人だけです。しかしトレードでは優勝する必要がありません。自分自身で納得できるトレードが出来ればいいのです。自分の場合はゴルフで言えば100を切るプレーができればいい、と思っています。100切るプレーができればトレードなら十分稼げるからです。マスターズで優勝できるレベルのトレードだと、上ヒゲから下ヒゲまでの全てのサイクルの波を取らないといけないでしょうが、実際そんな必要はありません。プロスポーツは相対的なのに対し、トレードは勝敗も完全に自己完結型で他人と比較する必要がありません。トレードは学習過程も含めて全て自己完結しなければならないという難しい面もありますが、マスターズで優勝しなくて良く、100切るプレーをすればよいのです。また200ヤードの池越えショットを無理して打つ必要もありません。その場面は見送ってボールがちょうど打ちやすいところに来た時に打てばよいのです。考え方ひとつでメンタルを楽にすることができます。自分の感覚ですがゴルフで100切るプレーが出来る人はトレードでもトータルプラス出せるようになると思います。それくらいトレードとゴルフは近いと思います。

迷晴れさんのいう「魚の目」、ハワードマークスのいう「2次的思考」という相場感の会得が最難関

迷晴れさんのいう「魚の目」とハワードマークスのいう「2次的思考」はおそらく同じものだと思います。迷晴れさんはよくトレードには「鳥の目、虫の目、魚の目」の3つの目が必要だと言われて言います。「鳥の目」は環境認識、「虫の目」はエントリータイミング、「魚の目」と「2次的思考」はいわゆるチャートには現れない深い思考であり、感覚です。投資家の集団心理ともいえると思います。ハワードマークスは「2次的思考」についてこう書いています。

「1次的思考は、単純で底が浅くだれにでも出来ること。2次的思考は奥が深く複雑で入り組んでいる」

ハワードマークス著 「投資で大切な20の教え」

自分の場合、ずっとやってきてふとこの「魚の目」がついたな、と思う瞬間がありました。いわゆるスコトーマ、心理的盲点が外れた瞬間でした。「あ、今日はもう下はないな」とか、朝起きた瞬間に今日の値動きのイメージが湧いてくることがあります。そんな感覚的なものです。これはチャートに向かい合い続けて感覚的に身に着けるしかないと思いますが、必ずしもこの「魚の目」がなければ相場で勝てない、ということは無いと思います。誰でも分かりやすい押し目買いや、レンジなどで場面を限定すれば、魚の目がなくても値幅が取れるところは多々あります。また環境認識とリスクリワードだけでエントリーできる場面も多々あります。自分は値が動き出す前から環境認識とリスクリワードだけでエントリーするのが一番好きです。

まとめ

トレードの難しいところをまとめると以下になります。

  • すべてが自己責任。全ての結果を自分が招いたことと受け入れること
  • 何も保障や確証がないなか、自分で道を決めて進むしかないこと
  • 体系的な学習プランもなく、教師もいない中、自分一人で学習進めるしかないこと。YouTubeだけが頼り。
  • ただただ先人(常勝トレーダと思われる人)の言葉を信じ、腹に落ちていないことでも、頭で理解して続けるしかないこと
  • ゴールが全く見えない中でも、自分が決めた事をただひたすら実直にやり続けるしかないこと
  • 認知バイアスが原因の負けが9割という現実。
  • 負け続け、自己否定の連続によってメンタルが崩壊していく。
  • お金を稼ぐために始めたトレードでも、勝ち負けにこだわってはいけない、という現実。
  • トレーダーはプレーヤであり、監督であり、メンターでなければならず、これらの全てを一人でこなす必要があること。
  • 「魚の目」「2次的思考」の会得は、チャートに真摯に向き合った結果得られるもので、何時これが得られるかも分からない。メンタルを健全に保ってチャートに真摯に向かい続けるしかない。
  • 「魚の目」「2次的思考」がなくても十分勝てるので、自分の信じるものの精度を上げ、相場感を高める努力を続けるしかない。

どうでしょう。これだけネガティブなことを連ねると、トレードやりたいと思いませんよね。実際、真剣にトレードに向かえば向かうほど、このような先が見えない世界に入ってきます。1つ壁を越えたと思ってもまた次の壁が出てきます。自分も何度も壁にぶち当たって「一生勝てないかもしれない」と不安に恐怖に襲われ、辞めたいと思った事も多々あります。トレードが他の商売よりも激難しい理由が少し分かっていただけたかと思います。

最後に

先ほど言った「一生勝てないかもしれない」という恐怖は脳が作り出した感情でありこれも認知バイアスの1つです。この「一生勝てないかもしれない」という恐怖の感情に明らかな根拠はあるのでしょうか。一生勝てないかもしれないですし、勝てるようになるかもしれません。未来は何も確定していないのです。このネガティブ感情と行動を切り離すことが、トレードの大敵「認知バイアス」対策の部分です。トレードの負けの9割の原因である「認知バイアス」。人を不安と恐怖に陥れる「認知バイアス」。これを対策せずしてトレードで勝てるようにはなりません。次回はこのトレードの大敵である「認知バイアス」対策について書きたいと思います。